皮膚科
- HOME
- 皮膚科
アトピー性皮膚炎・食物アレルギー
環境中の抗原(ハウスダスト、花粉、ノミ・ダニ等)に反応して起こる疾患をアトピー性皮膚炎と言います。一方、食物中の成分(主にタンパク質や炭水化物)に対して、免疫機能が過剰に反応して起こる疾患を食物アレルギーと言います。この2つをまとめてアレルギー性皮膚炎と呼びます。
アレルギー性の皮膚炎は完治することはなく、生涯に渡って管理が必要です。
特徴的な臨床症状として、アトピー性皮膚炎は、その多くが2〜3歳までに発症し、痒みを伴う皮膚炎が認められます。大腿部や内股部、四肢の屈曲部で特に症状が強く、発赤や発疹、脱毛等が出てきます。環境中の抗原に反応するため、抗原への暴露が増える時期に痒みが増す傾向があります(季節性の症状)。
一方、食物アレルギーの場合は、1歳未満から症状が認められる場合が多く、目周りや背中、肛門周囲に皮膚症状が認められます。長期的な消化器症状(嘔吐、下痢)を示す場合もあります。
食物アレルギーとアトピー性皮膚炎は、ある程度特徴的な臨床症状がありますが、その症状のみで判断することは難しい場合も多く、食物アレルギーを持つ半数のわんちゃん・ねこちゃんはアトピー性皮膚炎を併発していると言う報告もあります。また、痒みを伴う皮膚疾患は他にも多く存在するため、診断・治療にあったっては飼い主様への丁寧な問診や適切な検査、治療的診断が必要になってきます。
アレルギー性皮膚炎の検査
※基本的にアトピー性皮膚炎の診断方法は臨床診断になります。
※アトピー性皮膚炎及び食物アレルギー性皮膚炎が疑われる場合、最初に以下の検査を行い、痒みを伴う他の疾患(寄生虫、細菌、真菌感染症)の除外診断を行います。
除外検査
- スタンプ検査
- セロハンテープやスライドガラスを直接患部に押し付けます。染色液で染色し、顕微鏡で観察します。
- 抜毛検査
- 患部周辺の毛を採取し、顕微鏡で観察します。
- 皮膚搔爬検査
- 鋭匙やメスの刃を用いて搔爬します。特に寄生虫感染が疑われる場合に行います。
- 生検・病理組織学検査
- 診断が不明な時や確定診断を行う場合、局所または全身麻酔下で生検を行います。
- 真菌培養検査
- 真菌症の確定診断や同定のため行います。
- 免疫学的検査
- 自己免疫性皮膚疾患が疑われる場合に行います。
食物アレルギーの検査
- 血液検査
- アレルゲンに対する血液中の抗体価を測定します。リンパ球反応検査とアレルゲン特異的IgEの測定検査を行います。特にわんちゃんの食物アレルギーはリンパ球が関与するため、リンパ球反応検査には、主要食物アレルゲンパネルと除去食アレルゲンパネルの2つの検査をお勧めします。主要アレルゲンパネルは一般的なドックフードに使われる原材料への反応を調べる検査です。一方除去食アレルゲンパネルとは、アレルギー用の除去食フードに用いられる原材料に対する反応を調べる検査です。
- 除去食試験
- アミノ酸食、新奇蛋白食、加水分解食等を使用し、症状の改善の有無をみます。
アトピー性皮膚炎の検査
- 血液検査
- アレルゲンに対する血液中の抗体価を測定します。リンパ球反応検査とアレルゲン特異的IgEの検査が必要です。特にアトピー性皮膚炎はIgEが関与して起こる場合が多く、アトピーの疑いが強い場合はIgE検査を行います。同時にダニのタンパク質であるDelf2に対する抗体価を調べます。
アトピー性皮膚炎および食物アレルギー皮膚炎の治療
- ステロイド剤
- 経口薬、外用薬を皮膚炎症の程度により使用します。
- JAK阻害剤
- 痒みに起因するシグナル伝達回路を選択的に遮断するオクラシチニブ製剤を使用して痒みの緩和を行います。
- 免疫抑制薬
- 免疫抑制剤を使用し、過剰に反応して起こる免疫反応の経路の一部を遮断します。
- 減感作療法
- ハウスダストマイト(チリダニ)が原因抗原として認められる場合、組み替え型コナヒョウヒダニ抗原(Derf2)を用いた製剤を一定間隔で注射します。
- シャンプー療法
- 皮膚を定期的に洗浄することで、環境抗原の除去や常在菌の繁殖管理を行います。低刺激性のシャンプーや感染症予防用のシャンプーを使用します。
- スキンケア
- 皮膚バリア機能改善の為、保湿は必須です。セラミド関連物質や必須脂肪酸系の保湿剤の使用をお勧めします。
- サプリメント
- 皮膚バリア機能の改善や抗炎症効果を図る為使用します。脂肪酸や乳酸菌サプリメント等を使用します。
- 皮膚用フード
- 食物アレルギー用療法食を使用します。
- 抗ヒスタミン薬
- 抗ヒスタミン薬のみで治療することは困難であるため、上記の治療と併用して使用します。
アレルギー性皮膚炎の予防と対策
アレルギー性皮膚炎、特にアトピー性皮膚炎は治療によって根治が難しい疾患であり、生涯を通して管理が必要になってきます。長く続く治療に対して不安を抱かれる飼い主様も多いですが、だからこそ納得して続けられる治療を飼い主様と一緒に選択していきたいと考えます。特にアトピー性皮膚炎はさまざまな要因で形成されます。薬物のみの治療ではなく、スキンケアや食事、環境ケア、ストレスケアなど色々な面から治療していく必要があります。また、年齢を重ねる中や状況の変化等で治療経過も変化していきます。その変化にその都度治療内容の立て直しも必要になってきます。ご家族の皆様にとっても無理なく続けられる治療を一緒に選択できればと考えております。